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新型コロナウイルスに関する研究開発(5月20日更新)


我々人類は今、新型コロナウイルスという見えない敵と対峙し、生存をかけて戦っています。理化學研究所はその叡智を結集して新型コロナウイルスを克服する術を人類にもたらすべく、特別プロジェクトを立ち上げました。

およそ百年前、我が國の繁栄の礎となるべく設立された理研は、自然科學におけるあらゆる分野で研究成果を積み重ねてきました。巨大な生命科學系プロジェクトを擔うことで蓄積してきた、免疫學?遺伝學?構造生物學をはじめとした「知見」と、近年急速に発展している計算科學やAI、さらにそれを活かしたAI創薬などの多彩な「技術」を理研は有しています。これらを総動員し、本プロジェクトに注力する決意です。

人類はこれまで、科學技術を駆使して不可能を可能とし、多くの困難を乗り越えてきました。人類生存の危機に瀕した今、まさに科學技術の真価が問われています。理研は、國內外の研究機関や大學、企業とも力を合わせ、新型コロナウイルスの克服に貢獻します。

2020年4月21日
理化學研究所理事長 松本紘

理化學研究所 理事長 松本 紘のサイン


理化學研究所(理研)は、この新型コロナウイルス感染拡大の危機のなか、研究擔當理事による統括のもと、様々なニーズに迅速かつ機動的に応えていけるよう、より効率的な検出法の開発、効果的な治療薬開発のためのデータや施設等の供出、人々の生活や社會を持続させるための研究など、理化學研究所にしかない研究力?研究資源を最大限に活用した取り組みを進めています。

データの公開や先端大型共用施設の利活用による研究

検出法の開発

  • SmartAmp法を用いた迅速検出法の開発

    理研が開発したSmartAmp法は、従來のPCR法では1~2時間かかる反応を10~30分程度に大幅短縮することを可能とするものです。神奈川県衛生研究所との共同研究により、その有効性が実証されました。引き続き、さらなる時間短縮かつ簡便な検出法の開発を進めています。

  • 新型コロナウイルスの非増幅?高感度?迅速診斷技術の開発

    理研が開発した「核酸のデジタル検出技術」を基盤とし、新型コロナウイルス由來のRNAを非増幅?高感度?短時間で解析できる新規技術を迅速に開発します。

  • 新型コロナウイルス抗體の検出系の開発

    新型コロナウイルスの感染から回復した者の同定や治療中における抗體価上昇の検出に資するため、新型コロナウイルスのタンパク質から抗體を検出する技術を開発します。

  • 新型コロナウイルス検出用抗體の単離とオンサイト迅速ウイルス検出キットの開発

    ワクチンがない現時點では、COVID-19の防疫は、迅速で、かつ正確な「検査」と、素早い「隔離」という戦略しかありません。理研で構築した抗體探索技術を用いて、on-site検査が可能となる有効な抗體を単離し、この抗體を用いて、インフルエンザ感染と同様のon-site診斷キットの実用化を目指します。

治療薬?ワクチン開発のための研究

  • COVID-19 特別プロジェクトの開始について

    新型コロナウイルス感染癥(COVID-19)の世界的な大流行に対応するために、理研のライフ系センターや外部研究機関と連攜して治療薬の研究を開始しました。実験結果や計算結果について適宜公開し、グローバルの研究開発を支援し、共同研究、連攜を積極的に推進しています。

  • 新型コロナウイルス抗體製剤の開発

    理研が近年構築した抗體探索技術を生かし、新型コロナウイルス感染癥から回復された方から感染を阻害するヒトモノクローナル抗體を単離し、抗體製剤を作成します。

  • 剛性解析による新型コロナウイルスタンパク質の分析

    COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に含まれる各種ターゲットタンパク質の分子構造に対して剛性解析を適用することで、薬剤との結合部位を探索して創薬に貢獻します。

  • 新型コロナウイルスに対する化學合成ワクチンの開発

    一般的にワクチン開発の課題とされる「ウイルス変異」「抗體依存性感染増強」を克服すると期待されるワクチン技術mMAP(mutation-compatible multiple antigen peptides)を開発しました。この技術を応用して新型コロナウイルス感染癥(COVID-19)のワクチン開発を進めます。

  • ビタミンD3アジュバントを用いた簡易ワクチン開発

    ワクチンによる集団免疫はスピードと規模が鍵となります。理研での研究から見つかった、より安全なアジュバントを用いて、従來の注射針を使わないワクチン開発を目指します。とくに、発展途上國への供給を念頭に、世界中の人に、より迅速に行き渡るワクチンを開発します。

  • 新型コロナウイルス感染癥治療薬候補化合物の大規模データベーススクリーニング

    新型コロナウイルスに対して最適な治療薬の発見を目指して、大規模化合物データベースから類似度検索技術による治療薬候補化合物のスクリーニングを行います。

生活や社會を持続させるための研究

  • 新型コロナウイルス流行下における遠隔交流?対話支援システムの開発

    外出自粛に伴い他人とのコミュニケーションが減ることで高齢者が認知癥になるおそれが高く、高齢者を介護する施設ではクラスター感染が発生しやすくなっています。要介護高齢者が感染すると、癥狀が回復しても行き場がないために退院できず、病院のベッドをふさいでしまうことになり、醫療崩壊につながりかねません。そこで、遠隔交流および人工知能(AI)との対話を支援するシステムを開発し、そのもとで高齢者に対話を促すことによって、認知機能や身體機能の低下を抑制します。

  • 新型コロナウイルス感染癥に関するヘイトスピーチ?偽情報の分析

    新型コロナウイルス感染癥(COVID-19)の蔓延に伴うヘイトスピーチや偽情報等の攻撃的な言説の収集、分析を行います。

  • オンライン初診におけるELSIと対応策の抽出

    時限的?特例的に認められたオンライン初診について、対面では生じえなかった倫理的な問題やデータの扱いの課題といったいわゆるELSI(Ethics, Legal and Social Issues)について、オンライン、さらにはAIを用いた初診/問診における課題の分類と対応策の抽出を行います。

  • テレワークが人間に與える影響の調査?改善策の検討

    急激に注目を集めてきたテレワーク(在宅勤務)は、作業者側にさまざまな課題をもたらします。たとえば、昔からのVDT問題(作業姿勢等)の他、會話不足、ON/OFFの區切りがないことによる疲労、OFFの作り方、小部屋?小畫面でのオンライン會議による疲労、など)。これらについて、諸問題を調査し、改善策の策定を目指します。

  • 長期の診療報酬データ(レセプトデータ)を用いた新型肺炎患者の重癥化の予測

    大規模電子カルテデータや健診データと連結されたレセプトデータを利用して、「性年代とレセプトデータによる過去の既往癥?治療?検診データ」のみを使い、機械學習手法により迅速に(數分以內に)新型肺炎の重癥度予測を行う手法を開発します。

  • ICT?HPCを活用した新型コロナウイルスの感染癥伝播抑止?経済対策および社會センチメントのモニタリング

    安全?安心なパーソナルデータ管理運用技術(PLR:Personal Life Repository)を用いてAI?ICT?HPCを相互連攜させ、感染リスクの可視化や低リスク経路の推薦、感染伝播シミュレーションと対策立案、経済活動シミュレーションと経済対策立案などにより、新型コロナウイルスの感染拡大を抑止し、社會?経済的影響への対策を構じます。

  • ビッグデータを用いた行動変容のための情報通知內容の個別最適化

    COVID-19の流行収束をいち早く行うために、行動経済學のこれまでの実証研究の知見、およびマーケティング?メディア広告研究の知見を踏まえた上で、各個人のメディア接觸や攜帯端末の位置情報など得られているデータをもとに、誰にどのようなメッセージ訴求をどのタイミングでどのメディアで行うかの個別最適化を行い、感染リスクを高める行動の変容を促すことを可能にするための機械學習によるアルゴリズムを開発します。

  • コロナ感染癥の蔓延阻止のための技術的、社會的および法制度的方策の検討

    コロナ感染癥は薬、ワクチンなどの醫療的対策以外の技術的方策や法、社會の在り方も含めて蔓延阻止の総合的方策が必要になります。法的制約、自粛、同調圧力、アフォーダンス、ナッジなどが法?社會的手段として考えられますが、これらは単獨では効果が少なく、かつプライバシー保護の観點も含めて、どのように組み合わせれば効果的かを日英共同研究の形で調査、分析します。

基礎的な研究やその他の研究

  • ウイルスのライフサイクルを可視化するための技術開発

    ウイルスに対する組み換え抗體に、獨自に開発した頑強な蛍光タンパク質を融合し、ヒト試料や感染細胞の中のウイルスを可視化する技術を開発する。

  • 日本で流行している新型コロナウイルスの解析

    新型コロナウイルス のゲノムの進化を調べることは、今後のワクチン開発、また病態解析に重要な情報となり得ます。理研のゲノム解析基盤を生かし、増え続ける感染者からえたウイルスのゲノムの解析を網羅的に行います。

  • 新型コロナウイルス関連學術知識探索支援システムの開発

    COVID-19に関する生物醫學研究の情報科學的支援を目的として、COVID-19に関連する學術論文3萬件およびその他の生物醫學論文抄録2千5百萬件からなる論文ビッグデータを文書橫斷的に自動解析するAIシステムを開発します。

  • エピジェネティクスに基づく新型コロナウイルスの解析

    メチル基転移酵素による「SARS-CoV-2」ウイルスのN6-メチルアデノシン修飾などのRNAメチル化が、ウイルス複製や宿主応答などに及ぼす影響を機械學習を用いて解析することにより、COVID-19治療の標的になる可能性があるかを探ります。

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